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本場結城紬

本場結城紬

本場結城紬

本場結城紬は、糸つむぎから機織りに至るまで古来の技法が多く受け継がれている、日本を代表する絹織物です。最大の特徴は真綿から手でつむぎだす糸にあり、やわらかく空気を含んだ風合いは結城紬にしかない着心地を生み出します。四十以上にも及ぶ工程は分業によって担われており、一反の制作には何人もの職人が関わっています。関東平野を流れる鬼怒川流域を中心に、茨城県結城市から栃木県小山市にかけて生産されています。
※本場結城紬の制作工程のうち「糸つむぎ」「絣括り」「地機織り」の三工程は1956年に国の重要無形文化財に指定され、2010年にはユネスコ無形文化遺産に登録されています。

  • 産地と歴史

    本場結城紬の産地と歴史

    崇神天皇の時代に、多弖命(たてのみこと)が三野(美濃)の国から常陸国久慈郡に移り住み、長機部絁(ながはたべのあしぎぬ)と呼ばれる織物を始めたとされ、これが結城紬の源流といわれています。 絁(あしぎぬ)は太い糸で織られた絹織物と推定されており、奈良時代には常陸絁(ひたちあしぎぬ)が奈良朝廷へ献上された記録が残り、正倉院に保存されています。

    鎌倉時代になって政治の中心が関東へ移ると、質素で堅牢な紬が鎌倉武士に愛用されました。褐色(かちいろ)と呼ばれる黒に近い濃紺が好まれたといいます。室町時代の書物「庭訓往来」には、結城紬の前身とされる常陸紬(ひたちつむぎ)が諸国名産の一つとして記載されています。
    江戸時代の初めにこの地を治めた伊那備前守忠次は、縞柄を取り入れるなど紬の振興につとめ、「結城紬」の名が広く全国に知られるようになりました。数度の倹約令においても結城紬は取締りの難を逃れ、「粋」という概念とともに、江戸の町で大いに人気を博しました。江戸時代の百科事典「和漢三才図会」には、紬の最上品として結城紬が紹介されています。

    明治時代に至るまで、結城紬はそのほとんどが男性向けでした。しかし明治35年に兜町の証券取引所にて洋装での出入りが義務付けられるなど、男性の洋装が広まるにつれ、女性向けのおしゃれ着へと変化していきます。縮織や絣などの技術が発展し、それまで縞が中心だった結城で柄物を織るようになっていきます。昭和初期には特殊方眼紙や縦枠など新しい技術が開発され、手の込んだ細密な絣柄が作られるようになりました。

  • 工程/1,2

    真綿かけ、糸つむぎ

    真綿かけ
    本場結城紬の原料となるのは、繭からつくられた真綿です。煮繭した繭を5、6粒ずつぬるま湯の中で重ね、両手をつかって袋状に広げてから室内で乾燥させます。これを「袋真綿(ふくろまわた)」といいます。繊維をかたよりなく均等に広げるには熟練の技術を要します。本場結城紬に使用する真綿は主に福島県伊達市保原町で生産されています。

    糸つむぎ
    袋真綿をなめしてから「つくし」と呼ばれる道具にからませ、指先をつかって繊維をひき出し、糸をつむいでいきます。撚りのかからない手つむぎ糸は、空気をふくむために軽くてやわらかく、比類のない着心地と風合いを生み出します。糸質や太さに個体差が生じるため、手つむぎ糸には取り手の個人名が付され、節や凹凸が少ないほど「平らな糸」として評価されます。一反分の糸をつくるには少なくとも2、3か月の時間を要します。

  • 工程/3.4

    絣つくり、染色

    絣つくり
    設計された図案から、絣となる箇所を糸にうつし取る「墨付け」という工程を経て、絣模様をつけていきます。絣をつくる技法には、模様となる箇所を綿糸で固くしばって防染する「絣括り(かすりくくり)」と、糸に直接染料をすり込んでいく「すり込み」の二種類があり、図案によって使い分けます。原始的ともいえる技法を保ちながら、きわめて緻密な絣柄を発展させてきました。

    染色
    結城紬の染色は、機にかける前に糸を浸染する先染めです。指定された色を染料の配合と濃度によって正確に染め出すことが「紺屋(こうや)」と呼ばれる染め屋の仕事です。「絣括り」された糸を染める場合には「たたき染め」という結城紬独特の技法を用います。染液に浸した糸を棒の先にしばり付け、台にたたきつけることで、綿糸で括られた糸束に染料を均一に染み込ませていきます。

  • 工程/5,6

    機織り、湯通し(糊抜き)

    機織り
    本場結城紬の製織に用いる「地機(じばた)」は、たて糸を腰でひっぱりながら脚で下糸(したいと)を上下させ、体全体をつかって織ります。よこ糸を大きな杼(ひ)と筬(おさ)で交互に打ち込んでいくため、密度の高い丈夫な布に織り上がります。また絣模様がある場合は、極小の絣を合わせながら少しずつ織り進めます。日本全国をみても地機織りを保持している産地はごくわずかです。本場結城紬には無地、縞に限り「高機(たかはた)」と呼ばれる手織りの織機を用いた反物もあります。

    湯通し(糊抜き)
    本場結城紬に使用する手つむぎ糸には撚りがかかっていないため、そのままでは扱いが難しく、機にかけることも困難です。そのため産地では小麦粉を用いた特殊な糊付けをしています。仕立てる前に産地へ戻して頂き、専門の職人が湯通しと天日干しをすることで、結城紬本来のやわらかな風合いがあらわれます。結城紬の着心地を決める重要な最終工程です。

  • 工程/設計

    図案設計

    結城紬は専用の方眼紙上に設計された図案に従って制作されます。奥順には図案を設計するデザイン室があり、図案と色見本により機屋に反物の注文をします。基本的に作り手が自ら図案を作ることはなく、いかに注文通りに反物を仕上げるか、ということに職人の技術と意識は向けられています。

  • 商標・検査証

    商標・検査証の種類

    本場結城紬には四種類のラベルが貼付されています。 中央の二枚は「本場結城紬卸商協同組合」が発行する商標です。右側の商標には「結」マークと糸取り手のイラストが描かれ、組合員の屋号が捺されています。明治20年に商標登録されたもので、本場結城紬のラベルの中では最も歴史があります。左側の商標は「真綿手紬糸100%」を保証しています。二種類の商標は全ての本場結城紬に貼付されます。 両端の二枚は「本場結城紬検査協同組合」が発行する検査証です。右端の検査証は製織技法により色が異なり、「地機」は緑系、「高機」は茶系、「変わり織」はピンク系の背景色となります。また縮織の場合は「本場結城紬縮織之証」と表記されます。左橋の金色の検査証には「地機」「高機」「ちぢみ」の区別が明記されています。

生地紹介

奥順が図案設計を手がけた本場結城紬の一部をご紹介します。
※以下のリストは制作の記録として掲載するもので、販売やお取扱店についてのお問い合わせはお受けできませんのでご了承下さい。

本場結城紬

十字絣 網代地

本場結城紬

横段 繰りぼかし 縮織

本場結城紬

杢格子

本場結城紬

蚊絣 ソロ 縮織

本場結城紬

十字絣 カゴメ 縮織

本場結城紬

百亀甲絣

本場結城紬

無地 刷毛目

本場結城紬

本場結城紬

十字絣 網代地

網代とよばれる格子模様の上に、十字絣を重ねている。図案の上では重ねられるものでも、実際には平織という平面的な組織に落とし込む必要がある。網代は糸の配列によって表され、絣の糸自体の色の変化によって表される。異なる技術の組み合わせが模様の組み合わせにもなっている。

製織/須藤英
図案設計/奥順デザイン室

本場結城紬

本場結城紬

横段 繰りぼかし 縮織

緯糸に「繰りぼかし」と呼ばれる染め方をした糸を用いている。束ねた糸を途中まで染めると、一本の糸のなかで色が現れたり消えたりを繰り返す。途切れることで線がやわらかくなり、全体としては不均一な横段となる。設計の段階で偶然性を意図的に取り込んでいる。

製織/須藤英
図案設計/奥順デザイン室

本場結城紬

本場結城紬

杢格子

二色の糸をからませて一本にした糸を杢糸という。杢格子とはその杢糸を経緯に格子状に配列したもの。大正、昭和初期の見本帳には男物として頻出するが、現在では数が少ない。杢糸によって表面に見える色がランダムに入れ替わり、格子の線が途切れ、杢格子にしかない景色があらわれる。

製織/森肇
図案設計/奥順デザイン室

本場結城紬

本場結城紬

蚊絣 ソロ 縮織

蚊絣が水平垂直方向にまっすぐ並んだものを産地ではソロと呼ぶ。「揃う」から来た名だろうか。他の蚊絣と比べると余白が際立っている。十字のずれがはっきりと目立つため、絣一つ一つの精度がより強く求められる。縮織でこれほど絣の細かいものは珍しい。

製織/平澤義男
図案設計/奥順デザイン室

本場結城紬

本場結城紬

十字絣 カゴメ 縮織

十字絣は亀甲絣よりも歴史の古い代表的な絣柄。列によって呼び名が異なり、菱状に並べたものをカゴメと呼ぶ。空白があることによって動きが生まれ、また地色が強調される。ひとつの十字はタテ一本、ヨコ二本の絣によって組まれている。

製織/平澤義男
図案設計/奥順デザイン室

本場結城紬

本場結城紬

百亀甲絣

結城紬の方眼紙は亀甲絣のために開発された。横の罫線が二本ずつひかれ、マス目は少し縦長になっている。結城の機屋はどこに何本の糸が入るか、身体で覚えている。ゆえに亀甲絣以外の図案でもこの方眼紙を使う。亀甲絣を眺めていると下地の方眼紙が浮かび上がってくるようだ。

製織/須藤伸子
図案設計/奥順デザイン室

本場結城紬

本場結城紬

無地 刷毛目

経糸に二色の糸を交互に配している。刷毛で色をはいたように見えることから刷毛目と呼ばれる。異なる色が隣り合うために糸の輪郭が強調され、結城紬の特徴である糸の表情がより強く出る場合が多い。機にかけた状態では、上糸と下糸にそれぞれの色がきれいに分かれる。

製織/外山時子
図案設計/奥順デザイン室