繊細な手つむぎ糸を織物にする本場結城紬は、四十数工程におよぶ職人達の熟練した手仕事によって支えられています。分業による手仕事は、長年の経験で培われた技の連携プレーであり、一枚の布は多くの職人達の手によって生まれます。
繭(まゆ)から真綿(まわた)をつくり、真綿を道具にかけ、指先で引き出しながら糸をつむいでいきます。
こうして手で糸をつむぐことにより、人の手でしか生み出せない、豊かな風合いが生まれます。こうした手つむぎの技術は、世界的に見ても大変めずらしく、貴重なものです。

糸に糊を付けて補強しながら作業を進め、絣(かすり:柄)をつくるには糸の段階で文様になる部分を括るか、糸に色を刷り込みます。そして、結城ならではのたたき染めという方法で、細かい絣の部分に染料を浸透させます。



織りは古来の「地機(じばた)」で、手つむぎ糸に負担をかけないよう、経糸を腰でつり、人と織機が一つになり、張力を調節しながら織っていきます。樫の木でできた杼(ひ:緯糸のシャトル)と筬(おさ)とで打ち込んでいくため、密度のある絹織物になります。この地機織りも、今では貴重なもので、技術が残る産地は日本全国をみても僅かです。(結城には高機(たかばた)という足踏み式の手機で織られるものもあります)


そして、糊抜き・天日干しの作業を終えたとき、軽くて暖かく、柔らかで心地の良い布が生まれます。

これらの卓越した技術は、世界共通の財産として、2010年ユネスコ無形文化遺産に登録されました。 また、製作工程における[糸つむぎ・絣くくり・地機織り]の三工程は、1956年に日本の重要無形文化財として指定されています。
悠久の歴史の中で育まれてきた稀に見る繊細な技術は、日本の手仕事の極みを今も伝えています。
